2014.02.08
さぬきうどん卒業論文
この春に大学をめでたく卒業する学生さんから「さぬきうどん」をテーマにした卒論をメールにて頂きました。
今までのうどんの本などには載っていないようなあらゆる角度からアンケートを取っているところがいかにも専門家ではない一般の目から純粋にさぬきうどんを調査したものだなあと思いました。私的には感心した部分があり許可を頂き紹介させていただきます。
テーマ:「うどん食文化の社会学的考察」
- 論文要旨
- はじめに
- Ⅰうどんとは何か~その歴史を追う~
1.うどんの一般的な定説
2.うどんの歴史の別見解 - Ⅱ人々のうどんに対する位置づけ・嗜好~2003年度アンケート結果より~
1.学内で行ったアンケート集計結果
2.学内うどんアンケート結果から - Ⅲ讃岐うどんについて
1.うどん店等へのアンケート趣旨
2.讃岐うどんが発展した理由
3.現在の讃岐うどんの様子
4.讃岐うどんブームに関して - Ⅳおわりに
論文要旨
世の中には、古くから存在しながらも、現代でもしっかりと生き続けているものがある。それらには長い間人々に支持され続けてきたそれ なりの理由があるはずである。今回は、うどんをテーマとして取り上げ、何故うどんが現代の世の中でも生き続けているのかについて調べることにした。「うどんの過去・現在・未来」として、それぞれの時代でのうどんについて調べた。
うどんの過去として、まずは麺の歴史から辿っていく必要がある。麺の発祥地は中国とされ、そこから(諸説あるが)いつの頃にか日本にも 伝来し、それがうどんの出発点となった。
そして時を経て現代、さまざまな食べ物が手に入る時代になり、うどんは人々にどのような位置づけをされているのだろうか。それを調べるために学内アンケートを行った。結論から言えば、うどんは現代でも変わらず人々にかなり支持されていることが分かった。
では今後、うどんはどのような方向に向かっていくのだろうか。数年前に起こった讃岐うどんブームを手がかりにし、うどんは将来どうなっていくのかを、実際にうどん店を経営されている方々からのさまざまな意見を集めることで考えていくことにした。
はじめに
日本人は本当に麺類が好きな民族だ。日本にある麺類の例としては、ラーメン、そば、そうめん、きしめん、スパゲッティ…そしてうどん。
麺類の例を挙げればきりがない。そしてこれらの麺類はその製法も異なっており、同じ種類の麺でも数多くの異なった食べ方がある。このように、たくさんある麺類の中にあって、うどんは人々によく知られている麺類のひとつであると同時に、生活の中に深く溶け込んでいる食べ物である。小麦アレルギーの人を除いて、うどんを一度も食べたことがない人はほとんどいないだろう。
私はこのように古くからあるうどんが何故現代の生活にも密着しているのかに疑問を持った。このことを調べるには、うどんがどのようにして生まれ、どのようにして全国に広まったのかを調べることが必要だと考え、うどんの歴史をひも解いてみた。
私がうどんに興味を持ったもうひとつの理由は、私自身が香川県出身で、幼い頃からうどんを身近なものとして捉え、うどんに親しんできたことが挙げられる。そこで、私が親しんできたうどんは他人から見れば位置づけが違ってくるのか、また一口にうどんが好きと言ってもその好みにどのような差があるのかを調査してみようと思った。
さらに香川県に関して言えば、数年前にうどんブームが起こったが、このブームはうどん業界にどのような影響を与えたのか、現状はどうなっているのかに興味を持った。この点については、実際にうどん店を経営しておられる方々にこれらの疑問を直接聞いてみることで、その影響をいくらか明らかにすることができた。
Ⅰうどんとは何か
1.うどんの一般的な定説
うどんの歴史を探るには、まずは麺そのものの歴史から探っていく必要がある。これにはいくつかの説があるが、だいたい次に挙げるようなものが多い。
石毛直道氏によれば、以下のような説である。小麦はもともとシルクロードを通って西から輸入され、輸入された後に特に華北地域で栽培されるようになったので、漢の時代になるとこの地方を中心として麺類が誕生した。当時麺料理は「湯餅( タンピン)」と呼ばれ、「湯」はスープ、「餅」は小麦粉食品を指していた。つまり、麺類はスープの中に練った小麦粉を入れて煮た「すいとん」の類に起源しているということだ。
また、古典中国語では「麺」という漢字は小麦粉を意味し、「麺」を原料とした食品が「餅」と呼ばれていた。では何故当時の「すいとん」のようなものから現在私たちが知っている細長い麺になったかというと、中国には椀と箸を使って食事をする文化があるので、汁気の多い料理が広まっていたからだと考えられる。この汁気をからめるには、穀物の粉を表面積の大きい形状で捏ねればよいことが見いだされ、細長く加工されたと考えられる。これが中国で麺が生まれた経緯である( 1)。
では、麺類はいつ頃日本に入ってきたのだろうか。定説では、時代の移り変わりとともに「麺」の意味するものは変わっていったが、日本における麺類の歴史は奈良時代に中国から渡来した唐菓子の中の索餅・こん飩 ・はくたくが今日の麺類につながっていると考えられている。結論から言えば、索餅は現在のそうめん、饂飩はうどん、ほうとうはほうとうの起源だと言われている( 2)(3)。
うどんの歴史については、平安朝時代に書かれた宮廷の儀礼、法令集のようなものを書いた『延喜式』によれば、?飩は菓餅のひとつとして五節句などの祝膳に付けられたようである。さらにその『延喜式』が完成した10年後に書かれた、わが国最古の分類体漢和辞書『倭名類聚鈔』(略称『和名抄』、931~937年)の記述によれば、こん飩とは小麦粉を練って平たく伸ばし、中に切り刻んだ肉を餡のように包んで煮たものであることが分かる。このこん飩は、暖かい食べ物であるので「温(うん)どん」と呼ばれるようになり、その後「饂(うん)どん」になった、というのが一般的なうどんの歴史に関する定説である。
2.うどんの歴史の別見解
しかし一方で、この定説を認めない意見もある。うどんはうどん、こんとんはこんとんで、それぞれ別の食べ物であり、両者とも室町時代には既に存在していたという見解である。室町時代よりも以前の南北朝時代に「うどん」という表現が見られるのがその証拠である。うどんの初記録であると思われる文献『嘉元記』の1 352年5月10日の記述に、「─。三肴毛立タカンナ、ウトム、フ、─。」とある。この文章の訳は「酒の肴に、竹の子( タカンナ)、うどん、麩」であるが、うどんが南北朝時代に酒の肴になるほど広まっているのと同時に、うどんを「温どん」などとは言っていない証拠である( 3)。この他にも「うどん=?飩説」は正しくないとする説はいくつかある。
両説について私は決められないが、ともに刺激的である。
Ⅱ人々のうどんに対する位置づけ・嗜好
1.学内で行ったアンケート集計結果
現在日本には稲庭うどん(秋田県)や耳うどん(栃木県)、水沢うどん(群馬県)など、全国各地に本当に多種多様なうどんが存在しており、うどんというものは全国にくまなく定着していると考えられるが、うどん一般に対して人々がどのような意見を持っているかを調べるため、20 03年の春学期にうどんに関する学内の人々の意識を調査した。各地域(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州) ごとに集計したものと、全国の数値を合計したものとがあり、回答が得られなかった都県は省いた。ちなみに、調査結果の数字は無回答や複数回答などがあるので必ずしも合計が一致するわけではない。また、大学の所在地の関係上、回答数は近畿地方が最も多く、北海道・東北や九州では少なくなっている。地域ごとの回答者数の内訳は、北海道・東北で9 人、関東で5人、中部で27人、近畿で99人、中国で8人、四国で12人、九州で5人、計165人である。
このアンケートの質問項目は、パート1:うどんに対する関心の度合いを調べる2つの質問「1.日常的な麺類で好きなもの上位1 ~3位は?」、「2.うどんをどのくらい好きですか?」、パート2:実際にうどんがどのように利用されているのかを調べる5つの質問「3.うどんを食べる回数は?」、「4.うどんの位置づけは?」、「5.うどんをいつ食べますか? 」、「6.うどんを主にどこで食べますか?」、「7.よく利用するうどんの種類は?」、パート3:うどんの嗜好に関する4つの質問「8. 好みのうどんの硬さは?」、「9.好みのうどんの太さは?」、「10.温かい・冷たいうどんのダシは?」、「11.温かい・冷たいうどんの薬味は? 」そしてパート4:「12.うどんに対する不満は?」という4つのパート、計12の質問で構成されている。
まずは第1のパートでうどんや麺類に関する人々の大まかな意識を調査するために出した、うどんに対する関心の度合いを調べる質問から考察していく。数ある麺類の中でうどんがどのような地位にあるのかを調べるために用意したのが、質問1.「日常的な麺類で好きなもの上位1~3位は?」という質問である。日常的な麺類の選択肢は「そば」、「そうめん」、「ラーメン」、「うどん」、「パスタ」、「焼きそば」、「ビーフン」、「冷麺」である。この質問における全国の合計結果は、1番目に好きな麺類で票の多い順にラーメン(54)、パスタ(52)、うどん、(23)、そば(19)、焼きそば・冷麺(8)、そうめん(1)、ビーフン(0)となっていた。次に、2番目に好きな麺類に挙げられたのは、パスタ(41)、ラーメン(39)、うどん(36)、冷麺( 15)、焼きそば(14)、そば(11)、そうめん(7)、ビーフン(2)であった。また、3番目に好きな麺類に挙げられたのは、うどん(34)、焼きそば(28)、パスタ(26)、ラーメン(25)、そば( 20)、そうめん(16)、冷麺(10)、ビーフン(4)であった(グラフ1~3参照)。いずれの質問も全国合計で票が多かった選択肢にそれぞれの地域でも同じように票が集まっていることから、これらの結果に地域差はほとんど見られないと考えられる。うどんに関して言えば、好きな麺類1 位で3番目に多く、2位でも3番目、3位では1番多く票が集まった。この結果から、やはりうどんは生活に深くとけこんでおり、どの地域でも広く親しまれている食べ物であることが分かった。このことから、うどんの地位はかなり高いということが読み取れる。
今度は、質問2.でうどんをどの程度好きなのかについて調査した。好みの程度は5段階に分類し、この質問の結果は全国合計でとても好き( 58)、好き(68)、普通(32)、やや苦手(5)、苦手(2)となった(グラフ4参照)。うどんに対して否定的な意見である「やや苦手」、「苦手」という回答は北海道・東北で1 票、中部でも1票、そして近畿で5票見られた。一見すると近畿ではうどんはあまり受け入れられていないと考えることもできるが、近畿地方の回答者数が他の地域に比べてかなり多いので、近畿に関してはパーセンテージを用いて考察した。すると近畿では5 %の人が「やや苦手」「苦手」といううどんに否定的な意見を持っているという結果になった。これには個人的な好みの問題があるので、5 %というのは標準的な数値であると思われ、近畿では特別否定的な意見を持つ人が多いとは言えない。同じように、北海道・東北と中部の1 票ずつも標準的な数値であると思われる。今度は、うどんに対して肯定的な意見である「とても好き」、「好き」について考察していくと、これらの意見は全体の7 6%を占めており、多くの人がうどんに肯定的な意見を持っていると言ってよいだろう。この結果にも地域差はあまり見られなかった。
次に第2のパートで、実際にうどんがどのように利用されているのかを調べる質問について考察していく。まず質問3.でうどんを食べる頻度を調べた。この質問では「何日に1 回うどんを食べるか」という形式で回答してもらった。地域ごとの平均では、北海道・東北が32.3日、関東が20日、中部が2 0.4日、近畿が33.6日、中国が8.3日、四国が16.9日、九州が31.4日に1回、そして全国平均が2 3.3日に1回うどんを食べるという結果になった。この結果から、中国地方と四国地方では比較的よく食べられていることが分かる。全国平均の2 3.3日に1回であれば、1ヶ月を31日とすると、月に1.3回の割合でうどんを食べている計算になる。しかしこれらはあくまでも平均 であり、中には「365日に1回」という回答や、それとは対照的な「2日に1回」という回答もあり、非常に個人差が見られた。
今度はうどんを食べる時にどのような位置づけで食べているのか(主食か副食か)を調べる質問4.について考察していく。結果は全国合計で主食( 133)、副食(24)、その他(6)であった(グラフ5参照)。
地域差もほとんど見られなかった。よって、うどんは基本的に主食として食べられているのだと言うことができる。
ではうどんは一日のうちでいつ食べられているのだろうか。これを調べるのが質問5.である。(この質問については複数の項目に回答をした人が多く、合計が本来の回答者数1 65より多くなっている。)質問の結果は全国合計で朝(10)、昼(117)、おやつ(5)、夜(59)、夜食(15)であった(グラフ6 参照)。この結果から、ほとんどの人が昼と夜にうどんを食べていることが分かる。この点には地域差はほとんど見られなかったが、5 人の人が回答している、「おやつ」という少し変わった位置づけは近畿地方で4票と集中しているのが興味深い(グラフ7参照)。この地域ではうどんをおやつとして食べる習慣があるのかも知れない。
次はうどんが主にどこで食べられているのかを調べる質問6.について考察していく。選択肢は「家」と「外食」で、全国合計は家(9 2)、外食(77)とどちらもそれほど大きな差はなかった(グラフ8参照)。しかし、近畿地方では家が60票で外食が4 7票と家で食べる人の方が多かったのに対し(グラフ9参照)、九州地方では5人全員が外食と答えている(グラフ10参照)。他の地域では全くと言っていいほど家と外食の差は見られなかったが、この2 つの地域だけはその差が顕著に表れる結果となった。私の予想では、近畿地方にはたくさんのうどん店があるので外食の割合が高くなると思っていたのだが、結果は逆であった。この結果には大学の所在地が関わっているのかも知れない。大学は京都にあるので近畿地方の人は自宅から通う人が多く、必然的にうどんも家で食べる機会が多くなる。一方、九州地方の人は大学に通うために必ず下宿をしているので、学業と家事をうまく両立させるために外食をする機会が多くなったのではないかと考えることもできる。
さらに、家で食べる場合にはどんな種類のうどんがよく利用されているのかを調べるための質問が質問7.である。ここでの選択肢は「ゆで麺」、「乾麺」、「インスタント」、「冷凍」である。全国合計で多かったものから順に挙げるとゆで麺(94)、冷凍(34)、乾麺(20)、インスタント(18)という結果になった( グラフ11参照)。ゆで麺は一般的にインスタントのものよりも美味しく、しかもすでに茹でてあるので乾麺よりも簡単に調理することができ、またスーパーなどでいつでも簡単に比較的安く手に入れることができるという点で人気が高かったのではないかと思われる。この質問では地域差はあまり見られなかった。
今度は第3のパート、人々のうどんの嗜好に関する質問について考察していく。まず最初に、質問8.で好みのうどんの硬さについて考察していく。選択肢になっている麺の硬さについては5 段階あり、この質問の全国合計の結果は、コシが強い(62)、ややコシが強い(74)、普通(19)、やや柔らかい( 9)、柔らかい(1)となった(グラフ12参照)。うどんにコシを求める「コシが強い」、「ややコシが強い」と回答した人の割合は全体の8 2%を占めており、うどんにコシを求めている人が大部分を占めていることが読み取れる。この調査はコシが強いことが特長である讃岐うどんがブームになった後に行われたものであるので、このブームによって「うどんはコシが強い方が美味しい」という風潮が広まった結果ではないかと考えることができる。地域別に見ていくと、柔らかいうどんを求める「やや柔らかい」「柔らかい」を選んだ人は中部で2 人、近畿で7人、中国で1人であった。近畿地方には京うどんなど、比較的柔らかいうどんを食べる文化があるので、納得できる結果であると思う。一方、四国では回答した1 2人全員が「コシが強い」「ややコシが強い」を選んでいる(グラフ13参照)。これはこの地方では比較的コシの強いうどんを食べる文化があると同時に、コシの強い讃岐うどんが身近に手に入る環境があるので、こちらの結果も十分納得できるものであると思う。
質問8.のうどんのコシの質問と関連して、質問9.では人々の好みのうどんの太さについて調査した。太さは3段階に設定し、全国合計の結果は、太め( 42)、普通(99)、細め(22)であった(グラフ14参照)。この質問も地域別に見ていくと、「細め」と回答したのは中部で4人、近畿で1 6人、四国で1人という結果であり、近畿地方では細いうどんが比較的好まれていることが分かる。一方、「太め」「普通」と回答した人については全国で同じように分布しており、特に地域差は認められなかった。
次に、質問10.と11.ではうどんを「温かいうどん」と「冷たいうどん」に分類し、それぞれのうどんでの好みのダシや薬味について調査した。
まずは質問10.で、温かいうどんと冷たいうどんのダシの濃さの好みについて調査した。濃さは「濃い方がいい」と「薄い方がいい」の2 段階を設定し、温かいうどんの全国集計結果は、濃いほうがいい(49)、薄い方がいい(113)であった(グラフ1 5参照)。地域別に見ていくと、中部では「濃い方がいい」と答えた人は11人、「薄い方がいい」と答えた人は16人とあまり差は無いが、近畿では「濃い方がいい」と答えた人は2 4人、「薄い方がいい」と答えた人は73人と大きな差が出る結果となった(グラフ16参照)。これにはやはり一般的に言われているように、近畿では関西風の味が薄めのダシが好まれているということを裏付けるものである。その他の地域では、薄めのダシがやや好まれているという結果になった。
同じように冷たいうどんのダシについて考察していくと、この質問の全国集計結果は、濃い方がいい(110)、薄い方がいい( 52)であった(グラフ17参照)。この質問では、中部で「濃い方がいい」と答えた人が22人、「薄い方がいい」と答えた人が5 人(グラフ18参照)と、圧倒的に濃い方ダシが好まれている以外は特に地域差は見られなかった。
「温かいうどん」と「冷たいうどん」を合わせて考えてみると、「温かいうどん」では薄めのダシが、「冷たいうどん」では濃いめのダシが比較的好まれているようだ。
次に質問11.で、冷たいうどんと温かいうどんそれぞれの好みの薬味について考察していく。この質問では複数回答可にして、人々がうどんを食べる時にいつもどんな具を入れているのかをより具体的に示すことができるようにした。まずは「温かいうどん」についてだが、この質問の選択肢は「とろろ」、「ネギ」、「七味とうがらし」、「かつお節」、「天かす」、「その他」であり、その他と回答した人についてはその具体例を挙げてもらった。その全国集計結果は票が多いものから順に、七味とうがらし( 114)、ネギ(138)、天かす(81)、とろろ(33)、かつお節(27)、その他(25 )であった(グラフ19参照)。この結果から、多くの人にとって「ネギ」と「七味とうがらし」は温かいうどんには欠かせない存在であることが分かる。その他に挙げられた項目で特に多かったのは「かまぼこ」や「卵」、「天ぷら」「梅」などであったが、これらは全て薬味ではなく「具」とみなすのが妥当であると思われる。選択肢に挙げた以外の薬味では「大根おろし」や「しょうが」、「ゴマ油」などが1 票ずつ挙げられたが、それ以外には具体例は挙げられていない。地域別では、「天かす」が近畿で特に票が集まった(グラフ20参照)。それ以外では特に地域差は見られなかった。
同じように「冷たいうどん」の薬味について考察していく。ここでは「温かいうどん」と薬味は異なり、選択肢は「ネギ」、「のり」、「わさび」、「大根おろし」、「うずら卵」、「ゴマ」、「しょうが」、「その他」になる。
その全国集計結果は票が多いものから順に、ネギ(127)、のり(90)、わさび(66)、うずら卵(49 )、ゴマ(45)、しょうが(44)、大根おろし(42)、その他(16)であった(グラフ21参照)。冷たいうどんでも「ネギ」は欠かせない薬味であることが読み取れる。地域別では、「のり」が近畿で特に人気が高かった( グラフ22参照)。それ以外では特に地域差は見られなかった。
最後の質問はうどんに関する不満を自由に挙げてもらった。何らかの不満を挙げたのは165人中48人であった。その中で特に多かった意見は「関東と関西のダシの濃さの違いに関する不満( 6票)」、「すぐにお腹が空く(5票)」、「栄養価が低い(4票)」、「すぐお腹がいっぱいになってしまう(3票)」、「関東と関西の麺の太さの違いに関する不満( 3票)」、「バリエーションが少ない(3票)」であった。関東と関西のダシの濃さの違いに関する不満は6票のうち5票が近畿で挙げられ、残る1票は北海道・東北であった。この結果は近年の健康ブームによるものではないかと推測できる。一般的に関東のダシは濃く、関西のものは薄いとされ、薄めのダシが一般的な近畿では塩分を控えるのが賢明であると考えている人が特に多いようだ。
2.学内うどんアンケート結果から
学内アンケートでは以上のような結果になったが、ここからうどんというものを探っていくと、うどんとは全国でかなり親しまれている食べ物であり、平均で月に1 回以上は食べられている身近な食べ物である。
そしてうどんに関する好みにはある程度の地域差は見られるものの、特に大きな差は見られなかったという結果になった。これは近畿と中部以外の地域の回答者が少なく、それらの意見はどうしても少数意見になってしまい、なかなかその動向を知ることができなかったのが主な原因である。しかし、もし大きな地域差があれば、少数意見の中にもそれは必ず表れるはずである。地域差がそれほど見られなかったということは、ある程度日本全国で同じような風潮があると言えるのではないだろうか。
また、うどんに対する不満はかなり多く約30%もの人が何らかの意見を持っていた。その中でも票が多かったものについて改善すべき問題点かどうかを見ていくと、「関東と関西のダシの濃さの違いに関する不満」と「関東と関西の麺の太さの違いに関する不満」に関しては地域ごとの特性として捉えれば特に改善すべき問題にはならないと考えることができる。これとは逆に「すぐにお腹が空く」、「栄養価が低い」、「すぐお腹がいっぱいになってしまう」、「バリエーションが少ない」という不満に関しては改善できる可能性があり、今後改善していくことによってうどん文化をさらに発展させることができるかもしれない。
Ⅲ讃岐うどんについて
1.うどん店等へのアンケート趣旨
数年前に讃岐うどんブームが起こり、全国でうどんの認知度は上がったと考えられる。上記に示した学内アンケートでも、対象者がほとんど学生だったにも関わらずうどんはかなりの支持を得ていることが分かった。今や、うどんの中で讃岐うどんの比重は大きいと思われる。そこで讃岐うどんに関して、その歴史や現在の様子、そしてブームの影響等を調べ、今後もうどん文化を受け継いでいくきっかけにしていきたいと思っている。
現在の讃岐うどんの実態を調べるために、2004年の夏から秋にかけて香川県内の6つのうどん店および製麺所、そして今までに数多くのうどんを食べ歩きしてきた方にもアンケートをお願いした。なお、うどん店および製麺所についてはどの回答がどの店のものであるかは分からないようにし、企業秘密を明かさない程度で回答に協力して頂いた。
2.讃岐うどんが発展した理由
まずは、讃岐うどんの基本的な知識として、その歴史から探っていくことにする。
うどんを食べるという習慣が一つのまとまった食文化として成り立つためには、「原料である小麦がその地域で広く栽培されていること」、「小麦を小麦粉にするための道具の普及」、そして「調理加工法が人々の生活の知恵として行き渡ること」が条件となる( 4)。では香川県においてはこれらの条件がどのようにして整ってきたのであろうか。
まずは原料となる小麦の栽培についてだが、文献に出てくる初めての香川の小麦は『和漢三才図絵』という、江戸の中期に出版された百科事典であり、その記述には「諸國皆これあり、讃州丸亀の産を上とす。饅頭として色白し」とある。さらに昭和に入ってからも、兵庫県産や岡山産のものと並んで「三県麦」と言われ、全国的にも高い評価を得ていた。
その理由には香川県が少雨・水はけのよい花崗岩地帯・温暖な気候であり、小麦の栽培に適した土地だったことが挙げられる(4) (5)。
では、うどんを作るのに必要な小麦以外の材料は香川県ではどのように発展してきたのか、次に見ていくことにする。まず麺を作る時に必ず必要なのが塩であるが、瀬戸内海沿岸では昔から塩作りが盛んであった。
その中でも香川県産の塩は兵庫県のものと並んで良質なものとされていた。(5)
讃岐うどんではダシをとる際に必要なものとしてまずイリコが挙げられる。これは瀬戸内海沿岸にある伊吹島のものが良質とされている。醤油については、良質の小麦と塩が手に入るおかげで昔から良質のものが存在していた( 5)。
次に、小麦を小麦粉にするための道具についてである。これは石臼が登場する室町中期頃までは搗き臼が使われていたようだ。搗き臼とは、手杵とくびれ臼を使うもので、餅を搗く時に使われる臼のことである。
その搗き臼が初めて絵に現れるのは弥生農耕図と呼ばれる銅鐸の絵であり、その出土は香川県と伝えられている(4)。しかしこれだけで香川県には昔から小麦を小麦粉にする道具が広く広まっていたとはっきり断定することはできないが、何らかの影響があったのではないかと推測することはできるだろう。
最後に、調理加工法が広く行き渡っていたかどうかについてである。
調理加工法が行き渡っているということは、その地域に広くうどんが広まっているということである。香川県では、江戸時代(文化・文政時代)、明治初期にかけて金刀比羅宮( 琴平町)が栄えていた時には、ここを参拝する際に通る門前町にうどん店やうどんをふるまう旅館が立ち並んでいた。また現在では少なくなってしまったが、一昔前はお遍路さんが四国八十八ヵ所を巡礼する際にお接待でうどんなどがふるまわれていたりするなど、うどんと生活は切り離せない関係であった(4)。
このような理由から、香川県ではうどん食文化が発展し、広まっていったのだと考えることができる。
3.現在の讃岐うどんの様子
では、現在、讃岐うどんはどのようなものになっているのだろうか。
それを調べるために、うどん店と製麺所の方にアンケートに協力していただいた。
これに関連した質問項目は、讃岐うどんの特徴を調べる質問として「実際に店頭で行っている讃岐うどん独自の製法は?」、「使っている材料( 小麦粉・ダシ・薬味等)に関して、讃岐うどん独自のものは?」、「独特のコシを出すために行っていることは?」、そして現在の讃岐うどんの様子を調べるために「“一番美味しい讃岐うどん”というものは県内の共通の意識であるか? 」「うどんの工程等について、どの方法が一番効果的であるかは既に解明されているか?」という質問を設けた。
まず最初に、実際に店頭で行っている讃岐うどん独自の製法についての回答は、全体の意見をまとめると「昔ながらの製法(足踏み・寝かし・熟成・塩の量の調整、いわゆる「土三寒六」などの作業) で作られており、多少店によって違いはあるものの、県内においては決定的な違いはないと思われる」というものであった。「土三寒六」とは、夏( 土用)は塩1に対して水3、冬(寒)は塩1に対して水6、それ以外の季節は塩1に対して水5の割合で、練り水の塩分量を調整することである。季節によって塩の量を調整する理由は、塩を入れると生地は硬くなるという特性を活かして、気温・湿度が高い夏は塩分を多めにして生地を硬く保ち、逆に寒い冬は塩分を控えて生地を柔らかく保つためである。この質問からは、香川県内では昔ながらの製法が広く受け継がれているということが読み取れる。
次に、使っている材料(小麦粉・ダシ・薬味等)に関して讃岐うどん独自のものについては、小麦粉ではASW(オーストラリア産小麦) を使ったり、ASWと香川県内産の小麦粉を組み合わせたりしてその店独自の配合にしたり、県内産の小麦粉だけで組み合わせたりと、かなり店ごとに特色がでる結果となった。これは各店ごとにそれぞれ研究を重ねてきた結果であろう。
ダシに関しては香川県では主にイリコを使うので、どの店もほぼ同じ結果であった。また、薬味は回答を頂いた中では全ての店でネギが使われていた。これは「ネギはうどんに欠かせない存在である」という結果が出た学内のアンケートと符号している。ネギ以外では、しょうが、天かす、また生醤油うどんにはメニューに合わせて大根おろしや柑橘類、ゴマ等を添えている店もあった。
「独特のコシを出すために行っていること」についての回答は、「日々の温度に合わせた保水率で管理する」、「高過水で練り、鍛え、熟成を丹念に繰り返す」、「生地をたたんだり団子にしたりして層を重ねていく」、「たっぷりと寝かして熟成させる」、「生地を足踏みして熟成させ、グルテンを壊さないように手打ちで仕上げる」、「寝かしすぎても鍛えすぎてもいけないので、どのようにしたらうまくグルテンが出るかを長年の経験で考えながら作る」など、この回答にもその店によって特徴が出る結果となった。グルテンとは、コシのもとになる成分のことであり、粉の種類や塩の濃度、製造工程などでその量に差が出てくる。店によってこれほど差が出てくるということは、小麦粉の質問の時と同じように、店ごとにそれぞれ研究を重ねている結果であると考えられる。
上に示したアンケート結果から、製法は基本的にはよく似ているが、麺の材料や細かい製法では各店の特徴がでているということが分かったことを踏まえ、今度は美味しさに関して各店には共通の意識があるかどうか、および一番効果的な製造工程というものが存在しているのかどう かを調査した。
まずは美味しさに関して、「一番美味しい讃岐うどん」というものは香川県内で共通の意識になっているかどうかについて頂いた回答を見ていくと、どの店も「店にも客にもそれぞれの好みがあるので、店は自分に合ったものを作り、客は自分の味覚に合った店を選ぶ」という意見であり、共通の美味しさというものは存在していないことが分かった。前の質問で店によって小麦粉の配合やコシを出す工夫などに様々な違いが見られたことも、この結果を裏付けるものとなったようだ。
この質問と関連したこととして、店でうどんを作り店で食べる「一般うどん店」と、基本的には麺を作って卸す「製麺所」とでは目指している美味しさの方向が違っているという意見があった。その回答によれば、一般店では出来たての麺が当たり前なので、出来たてで食べると美味しい粉を使用したり、デンプンが多く入っている粉を使用したりする場合がある。デンプンが入っている麺には、「非常にツルツルしている」、「冷凍麺に似ている」、「小麦粉の味が薄い」、「コシが強い」という特徴がある。一方、製麺所の麺は卸しがあるので1 時間以上経っても麺がしっかりしており、デンプンは使用しない。デンプンを使用していない麺の特徴は「時間が経ってもしっかりしている」、「ややゴツゴツ感がある」、「小麦の味がする」であり、それぞれの麺で違いがあるようだ。一般店でデンプン入りの麺を使うようになった経緯は、今から2 0年ほど前に神戸で行われた全国生めん組合の大会で「ばれいしょのデンプン入りの粉」が発表され、それから数年後「タピオカ(外国産の山芋) のデンプン入りの粉」を大手製粉メーカーが開発し、それと同時期に県の組合から「超麺」という名前の粉も開発され、組合員は出来るだけ使うようにと斡旋されたことがきっかけだそうだ。これらの経緯から、一般店はデンプン入りの粉を使うことがあるのだという。このように、一般店と製麺所のうどんではそれぞれの目指す美味しさが違っていると言える。
次に、現在では製造工程でどの方法が一番効果的であるかは既に解明されているのかどうかについて、それぞれの意見は「経験によって作り方をさまざまな条件に合わせ、少しずつ変えていく」という意見と「現在の標準設備で可能なものであれば解明はされているが、粉によって性質が違うため、さぬきの夢2 000(注:1)のような新しい小麦粉が開発される度に研究し続けている」の2つに分けられる。「さまざまな条件」とは、小麦粉の種類、湿度、気温などのことであり、それらの条件に合うように作り方を変えているということである。また、「さぬきの夢2 000のように新しい粉が開発される度に研究し続けている」という意見も、小麦粉の種類によってその作り方を変えるという意見と同じであると思う。これらの意見をまとめると、基本的な製法は解明されているが、気象条件等細かい条件に合わせて少しずつ製法を変えながら作るということである。
4.讃岐うどんブームに関して
数年前に讃岐うどんブームが起こり、讃岐うどんは全国的に脚光を浴びることとなった。ピークの時には香川県内のうどん店を巡る「うどんツアー」に人気が集まったり、東京や関西など、県外にもたくさんの讃岐うどん店が新しくオープンしたり、また県内でもうどん店のオープンが相次いだ。そして現在、そのブームはどうなっているのか、ブームがもたらしたものは何であるか、讃岐うどんの将来はどうなっていくかなどについてアンケートを実施した。
ブームに関する質問項目は、「讃岐うどんブームの前と後で変わったことは何か?」、「讃岐うどんの将来はどうなっていくか?」、「うどん業界をもっと盛り上げるとすれば何が必要か? 」である。
まずは最初の質問、讃岐うどんブームの前後で変わったことは何かという質問では、マイナス面では「讃岐うどんの価格を下げてしまった」、「安易に出店する人が増え、需要と供給のバランスが崩れてしまった」、「マナーの悪い人たちが増えた」、プラス面では「県外の客が増えた」、「製麺所にも客が来るようになった」、「以前は四国8 8ヶ所参りのついでにうどんを食べに来る人が多かったが、ブームの影響でうどんを食べるためだけに来てくれる人が増えた」となった。この結果から、プラス面の影響もさることながら、マイナス面の影響がとても大きいことが分かる。ブームはうどんの価格を下げてしまったのと同時に、うどん店の数は既に飽和状態になっているようだ。これは香川県内や京都でもうどん店が次々と新規オープンしてきたという私自身の見聞と一致する。
気になるのがうどんの将来がについてだが、頂いた回答によれば「県外で営業している人はこれから厳しくなっていく」、「店の数は今後淘汰されていき、本物だけが残る」、「現在うどんブームも下火になり、本物の味を守り続け、伝統の味を守り続けることが大事である」、「もう既にブームは落ち着いているので、新たなうどんブームが来るまで落ち着いている」、「真面目な作り手がいて、うどん好きな客がいるという範疇の中では何も変わりはない」、「ブームにより地元香川県民が香川の食文化に改めて気づいたので、更なる発展となるだろう」となった。やはりうどん店を経営されている方たちは、もううどんブームはなくなったと感じているようである。しかしブームが去っても以前と特に変わるものはなく、ブームに流されずにこれからも伝統の味を守っていこうと多くの店では考えているようだ。
そしてブームの後、今後のうどん店の活躍に期待がかかるが、うどん業界をもっと盛り上げるとすれば何が必要かという質問では「お金の為に作るのではなく“ 本物”を作り続けていくこと」、「商品に真心を添えて提供すること」、「いかに全国の人に来県してもらえるようにするか、また自宅から注文してもらえるようにするかを考えること」、「同じ店の紹介ばかりではなく、もっとたくさんの店を紹介すること」、「個人としては真面目にうどんを作っていくだけなので、業界自体には興味がない」という結果になった。ブームが去ってからどう動いていこうとしているのかは各店さまざまであるが、よりよいものを提供し続けたいということに変わりはないことが分かった。
アンケートの最後で讃岐うどんの魅力について質問したところ、「安くておいしいこと」、「毎日でも食べられること」、「麺に醤油をかけただけでうまいと思えるところ」、「値段・味・人」、「シンプルで飽きがこない食べ物」、「作り手によっていかようにもなる、神秘的なものである」という回答を頂いた。このことから分かるように、讃岐うどんの魅力は一つに限られたものではなく広範囲に渡っていて、計り知れない魅力があるのだと思った。
では消費者の立場からもうどんを見ればどうなるか。この点を知るため、これまでにうどんを数多く食べてこられたという、うどん通の方に協力していただいた。
まず、讃岐うどんブームの前と後で変わったことについて質問すると、「特にない。川の水が増えたが、また元の川に戻って、川は流れ続けているだけである」という回答をいただいた。うどん店の方々が今後も変わらずにうどんを作り続けていこうと考えているのと同じように、消費者もこれからも変わらずうどんを食べ続けていくということに変わりはないようだ。
これと同じように将来の讃岐うどんについても尋ねたところ、「将来は“生活うどん”に戻るだけである。代替わりも進み、新時代の“ 生活うどん”が受け継がれてゆくだろう」とのことであった。やはり消費者にとって、これからもうどんを食べて続けていくというのは将来も変わらないことである。
さらに、うどん業界をもっと盛り上げるとすれば何が必要かとの質問にも「あくまで“生活うどん”であればいいので、盛り上がらなくてもいい。“ 生活うどん”をむりやり盛り上げようとしている人もいるが、普通のうどん好きにとっては、そのようなうどんは関係ない」との回答をいただいた。消費者としては、日頃から美味しいうどんを食べ続けることができればいいので、ブームをきっかけとして無理に業界を盛り上げる必要もないということであろう。
Ⅳおわりに
うどんはかなり古くから中国を起源として存在しているにもかかわらず、「はじめに」の部分でも述べたように、現在でも今までに一度もうどんを食べたことのない人はほとんどいない。それほどまでに長年人々を魅了し続け愛され続けてきたうどんは現在でも生き続けており、その魅力を少しでも解明できれば、との思いでこれまでうどんの魅力に迫ってきた。その結果、うどんは単なる「食欲を満たすだけの食べ物」ではないことが分かり、とてもうれしく思っている。もちろんうどんに関する意見は人さまざまではあるが、アンケートを見るかぎり、うどんに肯定的な意見を持っている人が予想以上に多いことに驚かされた。やはりうどんの魅力を感じている人がたくさんいるのだろう。
しかしアンケート結果の「うどんに対する不満」の項目からは、現在のうどんと、うどんに対する若者の要望とはいくらかのギャップがあるかもしれないということも分かった。これは今後の改善点となっていくかもしれない。
最後にこの卒業論文の反省点について、プロゼミの頃から2年間、私は主にアンケートを中心としてうどんについて調べてきた。うどんブームがまだまだ盛んであった頃に行った、最初の学内アンケートからはもう2 年が経とうとしている。よってブームが既に去っている現在、同じアンケートを行ったとしたら、また少し違った結果が出るのかもしれない。そしてうどん店等にご協力していただいたのは学内アンケートから1 年以上後のことで、ブームが下火になってきた頃である。その場その場でのタイムリーな結果を求めるのは難しいことだと改めて痛感した。
最後に、学内アンケートに協力してくださった方々、讃岐うどんの実態アンケートに協力してくださったうどん店および製麺所、うどん通の方々にこの場を借りて御礼申し上げます。
注:
(1)さぬきの夢2000讃岐うどん用に開発された香川県産の小麦で、香川県農業試験場などが開発したもの。ASWと比較すると生地調整の際に注意が必要であるなどの欠点が挙げられるが、粘着性や滑らかさに優れているとされる(6)。
参照:
(1)石毛直道、「奥が深い中国の味」、『本の窓』、2004年9・10月合併号、pp.13~14、2004、9・10月、小学館
(2)小島高明、『体当たりうどん考』、pp.194~195、朝日新聞社、1980
(3)加藤有次、『男のうどん学』、pp.200~207、215~219、徳間書店、1998
(4)さぬきうどん編集員会、『讃岐うどん物語』、pp.2、6、72~73、38~39、156~159、さぬきうどん研究会、1994
(5)「麺の博物館」・うどん探検隊ホームページ http://www.pref.kagawa.jp/menpaku/tanken/
(6)「香川県農政水産部農業生産流通課」ホームページ http://www.pref.kagawa.jp/seiryu/
参考文献:
小島高明、『体当たりうどん考』、朝日新聞社、1980
藤村和夫、『基礎うどんの技術』、柴田書店、1981
さぬきうどん編集委員会、『讃岐うどん入門』、さぬきうどん研究会、1992
さぬきうどん編集委員会、『さぬきうどん研究会・会報第22号』、さぬきうどん研究会、2003
はんつ遠藤、『全国ご当地麺紀行』、ゼネラルプレス、2003
長井恒、『日本の食文化体系15』、東京書房社、1983